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第96回アカデミー賞(2024年)において作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞など7部門で受賞を果たしたクリストファー・ノーラン監督の注目作「オッペンハイマー」
原子爆弾の開発者であるオッペンハイマーを描いた作品である事から、配給元は日本公開にあたっては、慎重な議論の末に公開に踏み切ったようです。
第二次世界大戦下のアメリカは、ナチス・ドイツよりも先に原子爆弾の開発を進める事を目的とした極秘プロジェクト「マンハッタン計画」を推進。このプロジェクトには数多くの優秀な科学者達が参加し、そのリーダーとなったのはユダヤ系天才物理学者オッペンハイマー。
やがて原子爆弾は開発され広島・長崎に投下。アメリカでは、戦争を早く終わらせ何百万人もの命を救った?人物としてたたえられるも、被爆地の想像を絶する悲惨な状況を知り苦悩するオッペンハイマーは、戦後、核軍縮を訴え原子爆弾よりも強力な水素爆弾の開発に反対します。
当時ソ連との冷戦下にあったアメリカ政府は、オッペンハイマーを国家安全保障上の危険人物とみなし、共産主義者として赤狩りの対象となり、ソ連のスパイ疑惑までかけられFBIの監視下に置かれてしまうのです。
原子爆弾の開発に携わった科学者たちは、その使用方法に関して口出しできず政府や軍にうまく利用されてしまったように感じる描写、マンハッタン計画で原子爆弾が開発される前にヒトラーの自殺によりナチス・ドイツが敗北したのにも関わらず計画を進め、日本に投下してしまうアメリカ政府の思惑、オッペンハイマーを貶めるアメリカ原子力委員会委員長の陰謀なども描かれており、決してアメリカ万歳、核兵器の肯定といった内容の映画ではないように感じましたが、クリストファー・ノーラン監督作品の特徴である複雑な時系列による編集と、科学者を中心にかなりの数の人物が登場し、物理学の専門用語が飛び交うので、一回の鑑賞ではすべてを理解するのが困難なので、この解釈が正しいのかわかりません。
オッペンハイマーを演じたのは、今作でアカデミー主演男優賞を獲得したキリアン・マーフィー。クリストファー・ノーラン監督作品の常連です。
アメリカ原子力委員会委員長を演じたのは、今作でアカデミー助演男優賞に輝いたアイアンマンのロバート・ダウニー・Jr.。
その他、エミリー・ブラント、フローレンス・ピュー、マット・デイモン、ケネス・ブラナー、そしてクリストファー・ノーラン監督のバットマンに参加していたあの俳優も出演していました。
マンハッタン計画における、人類初となる核実験「トリニティ実験」に成功直後、ニューメキシコ州ロスアラモス研究所から二つの原子爆弾を荷台に積み込んだトラックが出て行くシーン。その原子爆弾は、やがて広島と長崎に投下されることが容易に想像でき、直接的な原子爆弾を投下する描写よりも恐ろしく感じました。