|
戦国武将達の野望・裏切り・生きざまを描いた、登場人物が全員悪人という正に戦国時代版「アウトレイジ」といえる、北野武さん監督・脚本・編集・主演による最新映画「首」
シリアスでバイオレンスな空気感の中に、時たま織り交ぜる笑いを誘発させる演出のさじ加減が絶妙な「北野ワールド」炸裂です。
本作ではこの世界観に、「七人の侍」を始めとする黒澤明監督による一連の時代劇作品や、北野武監督自身が「ビートたけし」の名で俳優として出演している「戦場のメリークリスマス」「御法度」といった大島渚監督による作品のエッセンスをプラスしているように感じました。更には、得体のしれない異形の何かが登場するシーンもあり、デイヴィッド・リンチ監督やデヴィッド・クローネンバーグ監督の作品も思い浮かべてしまいました。
恐らく、確信犯的に賛否両論を呼ぶ作品に仕上げているように思います。
明智光秀の裏切りにより、織田信長を自害に追い込んだ事件「本能寺の変」
本作は、「本能寺の変」前後における信長を取り巻く武将や、各武将配下の人々の人間模様を描き、光秀をそそのかし謀反を起こさせた真の黒幕を暴いた、北野武監督によるオリジナルの解釈による物語。
いよいよクライマックスを迎えようとしている、NHKの大河ドラマ「どうする家康」では、「本能寺の変」における真の黒幕が家康と思わせる前振りをしながらも、結局、光秀単独犯として描かれていたので、比較して鑑賞すると面白いと思います。また、「首」と「どうする家康」は時代設定が被るので、信長、秀吉、家康、光秀等たくさんの同一の歴史上の人物を、それぞれ異なる俳優が演じており、それらのキャラクターを比較すると全く違う人物と言っても良いくらい描き方が異なっているのが印象的でした。
羽柴秀吉(ビートたけしさん)、織田信長(加瀬亮さん)、明智光秀(西島秀俊さん)、徳川家康(小林薫さん)、羽柴秀長(大森南朋さん)、黒田官兵衛(浅野忠信さん)、荒木村重(遠藤憲一さん)、千利休(岸部一徳さん)等を始め、豪華俳優陣が濃いキャラクターを演じています。
映画公開前に放送されていた、あるテレビ番組によると、カンヌ国際映画祭での上映後は5分以上にも及ぶスタンディングオベーションが沸き起こり、レッドカーペットではマーティン・スコセッシ監督やクエンティン・タランティーノ監督よりも、北野武監督に対しての歓声の方が大きかったと伝えられました。上映後の北野武監督会見シーンも紹介され、「世界的にこの映画は当たる。当たれば一儲け、嬉しい限りです。」と語っていました。たけし野節も健在です。