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「その日彼は、私に日本映画を見せ説明した。『荒野の用心棒』はこの雰囲気だと」
映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネが、セルジオ・レオーネ監督から見せられたのは、黒澤明監督の「用心棒」(映画を見て知ったのですが、二人は小学校時代に同級生だったそうです。)
「荒野の用心棒」のテーマ曲「さすらいの口笛」誕生の瞬間です。
この映画の主人公を演じたクリント・イーストウッドは語ります。
「映画を観てとても驚いた。なぜなら音楽が独創的で、当時あれほどオペラ的な西部劇の曲はなかった」
このような数々のエピソードが、エンニオ・モリコーネと親交のあった、映画監督や映画音楽家、音楽プロデューサーを始めとする各界著名人のインタビューと、モリコーネが手掛けた数々の映画の名シーンと共に綴られていく、モリコーネの波乱万丈な半生を描いたジュゼッペ・トルナトーレ監督によるドキュメンタリー映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」 5年以上にもわたる密着取材が敢行されたそうです。
2020年に91歳で逝去するまでに、500作品以上もの映画やテレビの音楽を生み出したというモリコーネ。本編には、その中の約50作品が紹介されていましたが、私が見た事がある作品は、荒野の用心棒、夕日のガンマン、続夕日のガンマン 地獄の決闘、シシリアン、ウエスタン、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ、アンタッチャブル、ニュー・シネマ・パラダイス、海の上のピアニスト、ヘイトフル・エイトなどのごく僅かでしかありませんでした。まだまだ、見なければならない映画がたくさんあります。
これほど偉大な映画音楽家でも様々な苦悩の連続で、モリコーネが映画音楽を作曲し始めた1960年代は、クラシック音楽に比べると映画音楽は、格下に思われていたようで、特にモリコーネが学んだ音楽学校の恩師や同級生からは商業的な音楽は道徳的に非難されていたというのです。
その後、モリコーネが音楽学校時代の人々に認められたのは、セルジオ・レオーネ監督の遺作となった1984年公開のワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカへ提供した曲だったそうです。
更には、何度もアカデミー賞の作曲賞にノミネートされながらも最優秀賞には選ばれず、挫折をし、映画音楽を幾度もやめようと思いながらも、あきらめずに作曲を続けた結果、2016年、遂に悲願のオスカー像を手にしたのはクエンティン・タランティーノ監督のヘイトフル・エイトでの曲。
タランティーノがアカデミー賞の壇上で「モリコーネの曲は映画音楽の作曲家のレベルを超えている、彼はモーツァルトであり、ベートーヴェンでもあり、シューベルトなのだ」とその偉業をたたえるシーンが映画の中に盛り込まれていました。
映画ファンは、見逃すことのできない「モリコーネ 映画が恋した音楽家」
現在、群馬県では シネマテークたかさき で上映中です。
家の中を探すと、セルジオ・レオーネ監督の、夕日のガンマン、続夕日のガンマン 地獄の決闘のDVDや、アラン・ドロン出演のフレンチ・フィルム・ノワール シシリアンのDVD、セルジオ・レオーネ監督の遺作 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカのサントラ、ジュゼッペ・トルナトーレ監督のニュー・シネマ・パラダイスのサントラなどのエンニオ・モリコーネによる曲の作品が出てきました。
更に、エンニオ・モリコーネと双璧をなすイタリア人映画音楽家、ニーノ・ロータのCDも発見してしまいました。