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1995年、イタリアの老舗ブランド グッチの3代目社長マウリツィオが路上で何者かに銃殺され、その首謀者が妻であるパトリツィアであったという衝撃的な実際の事件を、1970年代から1990年代を舞台に、事件に至るまでの二人の関係とブランド創業家であるグッチ一族が骨肉の争いにより崩壊していく過程、更にはその後の新たな資本になってからのトム・フォードの起用によりブランドが復活を果たすまでを描いたリドリー・スコット監督による作品。
1997年のジャンニ・ヴェルサーチの事件は知っていましたが、グッチの事件はこの映画を見るまでは知りませんでした。
これまでにリドリー・スコット監督は、エイリアン、ブレードランナー、ブラック・レイン、グラディエーター、ハンニバル、悪の法則など数々の優れた作品を生み出し、そのジャンルはSF、アクション、スペクタクル、スリラーなど多岐にわたり、正に巨匠と呼ぶにふさわしい監督です。
出演はパトリツィア役をレディー・ガガ、マウリツィオ役はアダム・ドライバー。グッチ家の人々としてアル・パチーノ(レディー・ガガと同じくイタリア系アメリカ人)、ジャレッド・レト(特殊メイクにより全く別人の容姿で出演)、ジェレミー・アイアンズ(ベン・アフレック版バットマンで執事アルフレッド役でした)。そして、現在グッチを保有しているフランスを本拠地とする企業「ケリング」の会長の妻であるサルマ・ハエックが、パトリツィアの専属占い師でありマウリツィオの事件にも関係がある役を演じているのは、監督が意図的にキャスティングしたのでしょうか?
音楽はブロンディ、デヴィッド・ボウイ、ジョージ・マイケルなどの曲、クルマはランボルギーニ・カウンタック、マセラティ・インディ、初代フィアット124スパイダー、ポルシェ924とおそらく第2世代911タルガ、アウトビアンキA112、アルファ ロメオ75と155のパトカーなど映画で描かれた年代のものが使用されていたので、衣装・装飾・小道具なども当時にこだわって制作されていると思われます。
それにしても、本作で描かれたグッチ家のスキャンダルは創業家による家族経営時代の事件であり、現在のグッチは全く別資本の会社なので関係ないと言えばそれまでですが、ブランドのイメージを考えると「よろしくない」と思われる内容の映画なので、これを許す寛容さはなんとなくイタリア的だと感じました。アラン・ドロン主演の古い伊仏合作フィルム・ノワール「ビッグ・ガン」ではマフィアがアルファ ロメオのディーラーを装って暗躍しているという設定でした。もちろんフィクションなのですが、この映画を見た時にも、イメージ的なことを考えると、アルファ ロメオの余りにもなおおらかさに驚きました。
「ハウス・オブ・グッチ」は夫婦間に亀裂が生じる過程が描かれた内容なので、デート向きではないと思われます。
しかし、とても見応えのある良いサスペンス映画でした