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「記憶にございません!」 これは、政治家が都合が悪くなった時によく使うフレーズですが、この言葉がそのままタイトルになっている通り、政治家が主人公の物語です。
しかし、三谷幸喜監督・脚本の映画ですから堅苦しくなく、お笑い満載の終始緩い雰囲気のストーリーで、変に教訓じみたメッセージもなく徹底して楽しめる内容です。
国民から史上最悪のダメ総理と呼ばれている黒田啓介内閣総理大臣が、演説中に頭に投石を受けて記憶喪失になってしまい、自分が総理大臣である事、大臣の顔や名前、妻や子供の事すら分からなくなってしまいますが、公にはならず、秘書官3人のみが事実を知っている状況で、総理大臣としての公務を遂行することになります。
主役の中井貴一さん(総理大臣)を始め、草刈正雄さん(官房長官)、佐藤浩市さん(謎のフリーライター)、ディーン・フジオカさん(首相秘書官)、小池栄子さん(事務秘書官)、石田ゆり子さん(総理夫人)、斉藤由貴さん(官邸料理人)、吉田羊さん(野党党首)、木村佳乃さん(アメリカ日系大統領)、寺島進さん(投石をする大工)などの豪華俳優陣が出演しており、中井貴一さん扮する総理大臣との掛け合いはとてもユニークでした。
子供のころから総理大臣になる事が夢であった主人公は、夢が実現すると、人間関係を始めとする、様々なしがらみにより次第に、初心の頃の理想とはかけ離れた状況に追い込まれますが、記憶喪失になったことをきっかけに、再度一からスタートし直して、本来の志を遂げて行くことになります。
政治の世界を舞台にしたファンタジーは、デートにもおすすめな、エンターテインメントでした。
数々の優れたドラマの脚本を手掛け、映画は今作が8本目の監督・脚本となった三谷幸喜さんですが、あるテレビ番組に出演した際には、「自分は、あくまでも脚本家であり、映画に関しては初心者ですから、監督業の時には学ばさせていただいているという気持ちで臨んでいます」との旨を語っていました。
まさに『実るほど頭を垂れる稲穂かな』といったお言葉です。